2010年6月28日
文字の研究‥其の二
大学時代に友人と二人でフォントを共同制作をしたその後、今度は一人で漢字を描き起こしてみたいという気持ちに至りました。
それまではフォント(書体)をつくるという方向で漢字を作っていました。作った描き文字は最終的に並べるわけですね。漢字が並んだビジュアル、つまり『密集した漢字の強さ』ということがどうしても頭に残ってしまったのが事の発端でした。そういった経緯から太古に創造された象形文字や金文を調べると密集した漢字の図像がでてきます。そのエネルギーというのは当時の僕にとって非常に魅力的なものでした。なにかそういうエネルギーを残しながらグラフィック的にも生かすことができないだろうか、などと書体を作るということから脇道にそれたような発作的な気持ちが僕のどこかにありました。
その後、ASYL のアートディレクターである佐藤直樹さんにそういった描き文字を見せながら色々と話を聞くという日々。この制作をスタートさせたのが大学4年時でしたので大学院の研究というようなものですね。そして担当の教授がアジールの佐藤さんに入れ替わったというような形でした。文字を描くことのアドバイスや感覚的なものなどの話をよくしてもらっていました。
ASYLでは当時『NEUT.』というオルタナティブなデザイン誌を企画しており、そこで自分なりの回答としての場を作って頂けるという話になりました。多彩なジャンルの方々が実験的にビジュアルを発表されている場でしたので、できるだけ自分の考えを純粋にビジュアルとして成立させるよう努めました。
一つ目の画面:いかに抽象的な造形のみで画面を成立させるかということ。文字を構成している要素は抽象的な図形。それらを組み合わせていくと文字になるのですが、その原型のみ(プロトタイプといったイメージでしょうか)ただそれだけの魅力のような画面です。そんな図形のみでの画面。
二つ目の画面:抽象的な図形から文字にメタモルフォーゼするような画面です。図形が抽象であるなら文字は具象。図形から文字に変わっていく「おかしさ」みたいなものを構成するといったビジュアル。
三つ目の画面:象形文字や金文などのイメージを残したビジュアルです。漢字の絵としての魅力を思い切り全面にだした、象形文字のような読めるけど読めなそうな雰囲気のある画面に。
大学時代からの文字制作でしたがこうした経緯で佐藤さんにお世話になりながら一つの事につきつめて研究することができました。上記のビジュアルはグラフィック誌『NEUT.002』に掲載されています。お手にされる機会がありましたらご覧ください。(その後についてはこちら。)
2010年6月24日
2010年6月20日
2010年6月18日
「原字ものがたり―デジタルフォントの原型」展
人形町人形町Vision'sにて開催中の「原字ものがたり―デジタルフォントの原型」展に足を運んできました。阿佐ヶ谷美術学校のタイポグラフィの授業から発した貴重な原字を展示するという企画だそうです。
活字を開発する際の手書きの美しい原字。書体が生まれてくる段階の手書きの文字を観覧できる貴重な展覧会でした。各分野で様々に使われている多種多様の原字を見る事ができます。普遍的な明朝体の原字から台湾で作られたラフな魅力の原字も。
メインとなる明朝体は面相筆で書体の細部の仕事も見れるのですが、ものすごい緊張感。。気の遠くなるような繊細な仕事で見ているこちらも息を止めるように拝見しました。オーソドックスで残り続けるモノの生まれる迫力を感じました。 展示は19(土)迄。
その後、馬喰町方面を散策。以前、展示をこの辺りでやったことがあるのでぶらぶらしてみました。ムサビの運営するgallery αM、FOIL galleryのビルに。だいぶこの辺りも様変わりしてきているなあと思いながら問屋街を歩いてきました。
そうこうしているうちにドシャブリの雨。そのまま帰ることに。今週は梅雨入りで雨の日が続くようです。蒸し暑くなりそうだ。
2010年6月17日
文字の研究‥其の一
以前の記事にも書きましたが学生の頃に友人と二人でフォントを制作していた時期がありました。はじまりは僕が美大のデザイン科に通っていた夏のことです。同学科のデザイナーの先輩に誘われたことからでした。
FONT1000という企画。グラフィックデザイナーであり美術家としても活躍されている味岡伸太郎さんが中心となり活動しているグループです。錚々たる書体デザイナーやロゴタイプデザイナー、文字に関わる重鎮の方々。学生の身でしたので、おののいたものです。
デザイン学科の先生がFONT1000に参加されている方でしたので、タイポグラフィーに興味のある学生である友人と僕に声をかけていただきました。書体制作については右も左も分からない学生でしたので当時の学校の課題から比べると本当に大変でした。きっと一人ではできない仕事だったと思います。友人宅や共に制作をされていたデザイナーの先輩の事務所にて合宿をしながらの日々でした。なかなか体験できない共同制作することができたことがなにより貴重な経験になったと思います。
さて、この制作した文字の書体名は『ブロックライン』としました。名前のとうり、文字を組んだ時に岩がコロリコロリと並んでいるように見えるからです。書店などでも時々見かけるようになり嬉しい限りです。今みると学生時代の辿々しさや健やかな表情が出ている気もします。
お役に立てそうな機会があったら是非この文字を使ってみてください。
また、その後『漢字』を用いて個人的につくりもじを作っていきますがそれはこちらから。
2010年6月10日
『NB@ggg』
銀座gggのNeville Brody『NB@ggg』へ。
90年代のアンダーグラウンドな雰囲気。学生の頃を思い出す。抽象的な図形がグラフィカルに構成されている会場構成も面白かった。会場自体がインスタレーションのような空間で Brodyの作品データの中にあたかも自分が入ってしまったかのような印象。
過去の作品群もパワフル。フォントの幾何学的なフォルムが際立っている誌面デザインや、macが出始めた時期の独特なパワーのような時代の流れを感じる。学生のころ図書館にいっては Brodyの作品の掲載された雑誌をみていたことがあったことを思い出す。アカデミックな授業に疲れた時にカルチャーどっぷりの誌面を見るのが好きだった。しかしながら独特な立ち位置にいる人だと思う。
僕らの学生時代のころには オリジナルのフォントブームみたいな流れがあったけどやはり源流をたどるとなると Brodyにも行き着くのだろうな。会場で展示されている誌面の文字の強度はただならぬパワーを持っており Brody図形の美しさを放っていた。
90年代のアンダーグラウンドな雰囲気。学生の頃を思い出す。抽象的な図形がグラフィカルに構成されている会場構成も面白かった。会場自体がインスタレーションのような空間で Brodyの作品データの中にあたかも自分が入ってしまったかのような印象。
過去の作品群もパワフル。フォントの幾何学的なフォルムが際立っている誌面デザインや、macが出始めた時期の独特なパワーのような時代の流れを感じる。学生のころ図書館にいっては Brodyの作品の掲載された雑誌をみていたことがあったことを思い出す。アカデミックな授業に疲れた時にカルチャーどっぷりの誌面を見るのが好きだった。しかしながら独特な立ち位置にいる人だと思う。
僕らの学生時代のころには オリジナルのフォントブームみたいな流れがあったけどやはり源流をたどるとなると Brodyにも行き着くのだろうな。会場で展示されている誌面の文字の強度はただならぬパワーを持っており Brody図形の美しさを放っていた。
2010年6月9日
『老若男女世界文学選集挿画展~猫のゆりかごを描く~』
外苑前のギャラリーDAZZLEさんにて開催中の『老若男女世界文学選集挿画展~猫のゆりかごを描く~』に伺ってきました。書籍のデザインの仕事をされているマルプデザイン主催の展覧会です。
12名のイラストレーターさんとマルプデザインの4名のデザイナーさんとの共作で文庫本を発表するといった趣旨の展覧会です。マルプデザイン主催の清水さんとは前回の『道場マッチ』の時に少しお話をさせていただきました。自分も書籍のデザインを志す新米として色々お話してくださり嬉しかったですね。
さて、今回の展示について。
以下引用:
カート・ボネガット著「猫のゆりかご」は 友人に勧められて読み始めましたが、映画「スローターハウス5」の原作者と知り、 荒唐無稽で滑稽で物悲しい、この話の可視化に挑戦したくなりました。マルプデザイン清水氏のレクチャーを受け、挿画と装画の2つにチャレンジします。実際に印刷物まで制作し原画と共に展示いたします。
「猫のゆりかご」という小説を描かれた12の原画と、それぞれ絵を文庫に生かしたデザインとを両方見ることができるという興味深い展示。イラストレーションとデザインによってこんなにも膨らみがでるんだなあと勉強になりました。美味しい野菜や魚介を新鮮にお皿にもる料理屋さんのような空気がギャラリーに垣間見えます。
会場では弘田京子さん、小林賀子さん(共にイラストレーターさん)のお二方とお話をすることができました。小説の内容からイラストができあがるお話をお聞きでき、本の形が浮き上がるわくわく感を感じました。
会期は13日までです。
登録:
投稿 (Atom)